カテゴリー別アーカイブ: Z社裁判

2024

11.16

11月11日(金)東京知財高裁において、当社とZ社の間で和解が成立しましたので、ご報告いたします。

当社は、令和4年(ネ)第10069号著作権侵害差止等請求控訴事件に対して、知財高裁での和解に応じました。また、同日、和解条項に従って、和解解決金をZ社に対して全額の支払いを完了しました。

 

これにて当裁判は、すべて終了しました。

 

和解条項では、2019年9月より現在まで、Z社の住宅地図の複写を一切やめており、今後も許諾のない複写は行わないことを誓約しました。

長い裁判でしたが、時代の流れとともに著作権侵害への考え方もかなり変わってきており、当社が時代に即していなかったことが原因と、大変反省しております。今後は、各種著作物への配慮を欠かさないように心がけ、公明正大なビジネスが展開できるように努力してまいりたいと思います。

 

ご協力いただいた皆様、応援していただいた皆様には大変感謝しております。数々の励ましのお言葉、ご助言をいただきありがとうございました。

 

当社もこれを機会に生まれ変わって、再度時代に即したポスティングビジネスにチャレンジしていく所存でございます。変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

当該裁判に関する件の問い合わせ窓口を以下に一本化しておりますので、情報公開をご希望される方々は、こちらにご連絡ください。

 

㈲ペーパー・シャワーズ Z社住宅地図裁判窓口 0120-881-986

(平日10;00~16;00)

 

               2022年11月16日

                          ㈲ペーパー・シャワーズ 

                           代表取締役 村松昭文

 

                    

2024

07.27

東京地裁判決文 解説⑥

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、さいごの争点11に対して公表していきます。

【争点11】

 

争点11 PS社における住宅地図の利用が、Z社に損害をどのくらい与えたのか?(損害額の確定)

 

■Z社の主張■

 

Z社では、Z社住宅地図を自動車保管場所証明申請や建築確認申請に添付するためにコピーを許諾する複製許諾証を、1枚200円で販売している。また、「Z社住宅地図出力サービス」においては1枚当たり550円、複製許諾付きのものは770円、「Z社住宅地図プリントサービス」においては1枚当たり400円で、それぞれコピーを許諾している。

PS社が設立する前のMは、5万3802枚、PS社設立後は、283万6022枚をそれぞれコピーしているので、それぞれに許諾最低料金の200円をかけた額が損害額である。

それに弁護士費用相当額を足すと、以下のようになる。これがZ社の主張する損害額である。

 著作権侵害額

  M       53,802枚✕200円 =  10,760,400円

  PS社  2,836,022枚✕200円 = 567,204,400円   

 弁護士費用相当額                66,478,440円    

         合計           6億4444万3240円

 

■PS社の主張■

 

公益社団法人日本複製権センターでは、組織内での利用を目的としてコピーに係る使用料を1ページ当たり4円と定めている。また、一般社団法人学術著作権協会が定める、内部利用目的の基本複製使用料は、1ページあたり2円である。

さらに、Z社を含む日本の主要住宅地図業者6社のうち3社は、PS社の利用方法なら追加の許諾料の支払いを求めていない。

したがって、Z社に生じる損害額は、1枚当たり0~4円の間とするべきである。

Z社の主張では、1枚当たり200円を下回らないと主張するが、本件訴訟が提起される前に上記金額が公開された事実は認められないし、ポスティング業界に対して利用料金が示されたことはない。

したがって、Z社の損害額算定には誤りがある。

 

■裁判所の判断■                           

 

本件訴訟に現れたすべての事情を考慮すると、Z社の著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、見開きの片側1ページ複写あたり200円と認めるのが相当である。

Z社は、2002年(平成14年)10月21日から、1枚200円で複製許諾証の販売を開始していることが認められるから、複製許諾証の価格は公開されており、ポスティング業界を含め、一般的にこれを知り得たというべきである。

PS社は、自らの事業であるポスティング業務を行うために、Z社住宅地図を複製し、ポスティング用地図を作成したもので、それはZ社が想定する複製許諾証の利用目的には該当しないとしても、Z社の損害額(著作権使用料)に相当する額の算定に当たって、考慮すべき一事情となる。

その他、PS社のいずれの主張も採用することはできない。

2002年(平成14年)の本件改訂時期後の住宅地図に対してZ社が著作権行使をできる枚数については、争点3において示した96万9801枚である。

また、弁護士費用相当額についても以下のように認めるのが相当である。

 

 

著作権損害額     989,801枚✕200円= 193,960,200円

弁護士費用相当額                  19,000,000円     

                         212,960,200円

したがって、Z社に生じた損害額の合計は、2億1296万0200円である。

 

 

 

争点1~争点11の結論

 

Z社の請求は、PS社が差止等対象地図をコピーし、同地図の複製物を譲渡により公衆に提供し、自動公衆送信又は送信可能化してはならない。PS社とM社長は、連帯して3000万円及びこれに対する令和元年11月15日から支払済みまで年5分の割合の金員の支払いを求める限度で理由があるから容認し、それ以外は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

今回で、東京地裁の判決文の解説は終了します。7月末時点では、知財高裁での控訴審に移行しておりますが、ひきつづき、裁判の状況は、こちらのブログで報告させてもらいます。(当社で公表できる内容のみですが)

この間、多くの会社、個人の方々からお問合せをいただきました。ひとつひとつに丁寧に対応させていただいております。励ましのお言葉もいただき、本当にありがとうございます。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けておりますので、お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

 

 

 

2024

07.12

東京地裁判決文 解説⑤

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点9と争点10に対して公表していきます。

 

 

 

 

【争点9】

 

争点9 住宅地図の利用者が零細的利用であることを理由とする著作権行使の制限があるのかないのか?(Z社の著作権行使は、濫用ではないか?)

 

■PS社の主張■

 

重量のある住宅地図の書籍を持ちながらポスティングを行うことは非現実的であり、配布員がZ社住宅地図を下図とするポスティング用地図を持ち歩くことによって、それが著作権を侵害する結果となったとしても、零細的利用として、Z社の著作権行使は制限されるべきである。

 

■Z社の主張■

 

そもそも零細的利用であればこれに対する著作権の行使が制限されるという考えは、著作権法上も裁判例上も受け入れられるものではない。なお、PS社の行為は大量にZ社住宅地図をコピーし、利益を上げていたものであるから零細的利用であるとは到底いえるものではない。

 

■裁判所の判断■                           

 

PS社の主張が、Z社の権利の濫用を主張する趣旨であったとしても、2006年(平成18年)以降に発行されたZ社住宅地図を合計98万9801頁もコピーした行為は、Z社の著作権行使が濫用であるとの評価の根拠にはならない。

したがって、PS社の主張は採用できない。

 

 

 

 

 

 

 

【争点10】

 

争点10 今後、PS社がZ社住宅地図を所有していることにより、Z社の著作権を侵害するおそれがあるかどうか?

 

■Z社の主張■

 

PS社は、Z社住宅地図をコピーし、複製物を譲渡又は貸与により公衆に提供し、これをPS社ウェブサイト内で掲載することにより、自動公衆送信又は送信可能化しているから、今後もZ社の著作権を侵害するおそれがあると言える。

 

■PS社の主張■

 

PS社は、すでにZ社住宅地図及びこれをコピーして作成したポスティング用地図を一切使用しておらず、今後も使用する意思はないから、今後Z社の著作権を侵害する恐れはない。

 

■裁判所の判断■                           

 

Z社住宅地図の1~11の最新の版に係るものが、差止等対象地図になる。PS社はポスティング業務を行うにあたり、現在差止等対象地図を保有していなかったとしても、一般に販売されているZ社住宅地図を再び取得してコピーすることは容易であるから、PS社が将来的にZ社住宅地図の複製権、譲渡権及び公衆送信権を侵害するおそれがあると認めるのが相当である。

Z社住宅地図の12~16は、貸与権を侵害していた事実は認めていないので、将来的にも侵害するおそれはない。

したがって、PS社は差止等対象地図を保有しておらず、その複製物も所有していると認められないため、Z社における差止等対象地図の廃棄請求は認められない。

(注)Z社住宅地図の1~11などの番号は、PS社の屋号「まかせて」ごとの市町村を示しています。1~11は、PS社直営エリアの市町村であり、12~16は、PS社のフランチャイズエリアの市町村を差しますが、ここでは省略いたします。

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

次回は、争点11を解説します。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けています。お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

 

 

 

 

 

2024

07.04

東京地裁判決文 解説④

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点6と争点7と争点8に対して公表していきます。

 

【争点6】

争点6 Z社は、PS社が社内コピーを繰り返していると知っていて住宅地図を売っていたのか?(許諾の有無)

 

■PS社の主張■

 

遅くとも2013年(平成25年)には、Z社から住宅地図を割引価格で購入していた。ポスティング用地図は、本社壁に貼るなどして利用しており、Z社はPS社内での住宅地図の利用方法を十分把握していた。また、2014年(平成26年)2月25日には、PS社本社にて、Z社は電子住宅地図デジタウンのデモンストレーションを行っている。

これらの事情から、Z社がPS社内での住宅地図を必要な範囲でコピーしていたことを許諾していたというべきである。

 

■Z社の主張■

 

Z社は、日本中の多種多様な団体に対して住宅地図を販売しており、各購入者がどのような用途でZ社住宅地図を使用しているかを逐一調査することなどは、到底不可能である。PS社の著作権違反の疑いがあることを知ったのも、内部告発がきっかけであり、PS社の社内利用を知っていながら、住宅地図を販売していたことはない。

また、PS社からは複製の許諾を求める申し入れすらない段階で、許諾するわけはない。

したがって、Z社がPS社のポスティング用地図を作成に対して住宅地図をコピーすることを許諾したことはない。

 

■裁判所の判断■                          

 

PS社の主張をもっても、Z社があらかじめPS社のポスティング用地図を作成するためにコピーすることについて許諾していたと認める十分な証拠ということはできない。

したがって、Z社の許諾は無かったと言える。

 

 

【争点7】

争点7 許諾料を支払うことなく、住宅地図を社内コピーするといった慣習があったのかなかったのか?(慣習の有無)

 

■PS社の主張■

 

住宅地図は、大きさや重さの面から持ち歩くことが困難であり、実用品として販売されている。PS社が、Z社以外の3社の住宅地図作成会社から、住宅地図を購入するにあたり、ポスティング用地図を作成するためにコピーすることを許諾されており、3社からは通常の購入価格以外に追加料金を支払うことは求められなかった。

これらの事情により、住宅地図を正当に購入した者は、同時使用しないことを前提として、当該住宅地図を購入価格以外の対価を支払うことなく1部コピーすることが許諾されているという慣習があると認められる。

 

■Z社の主張■

 

住宅地図作成会社は、いずれもその作成する地図に、当該地図を無断でコピー等することは著作権法により禁止されていると明記されている。他社がPS社に許諾した内容は、通常は禁止されているコピーを例外的に認めるとしたものにすぎない。

 

■裁判所の判断■                          

 

PS社の論理には飛躍がある。Z社以外の住宅地図作成会社3社が提出したポスティング会社の利用方法であれば追加の使用料等なくコピーすることを許諾したことは、認められるものの、このような事実によって、住宅地図作成会社一般について、販売した住宅地図のコピー等を追加の使用料の支払いを受けることなく許諾するという慣習が存在すると認めることはできない。したがって、PS社の主張を採用することはできない。

 

 

 

 

 

【争点8】

 

争点8 PS社とM社長は、住宅地図のコピー行為に対して、著作権法30条の4の内容を適用されるべきか否か?

 

■PS社の主張■

 

ポスティング用地図は、配布エリア、配布数、空家・廃屋の別、新築物件、新たに設置された道、家屋の入り口やポストの位置等の情報を享受する目的で、下図としてZ社住宅地図を利用している。したがって、ポスティング用地図に、Z社住宅地図の何らかの思想又は感情が残存していたとしてもこれを享受する目的とするものではない。

したがって、著作権法30条の4柱書「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に該当し、PS社はZ社の住宅地図を利用することができる。

 

■Z社の主張■

 

Z社住宅地図を利用する者は、家形枠等を目的となる地点の検索又は地形の把握という知的又は精神的な欲求に従って利用している。PS社も家形枠等の記載を利用することを前提としてポスティング用地図を作成している。したがって、著作権法30条の4により許される事案に適用されない。なお、同条は2018年(平成30年)改正、2019年(平成19年)1月1日施行されたものであるので、同日以前のコピーに対しては適用されない。

 

■裁判所の判断■                           

 

PS社は、Z社住宅地図に記載された建物の位置、道路等の情報を利用するために、コピーしたものだから、コピー行為は、Z社住宅地図に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は配布員に享受させることを目的としたものであることは明らかである。

また同様に、PS社が複製物を譲渡したり、複製物をウエブページ上に掲載したりしたことも同様に享受している。したがって、著作権法30条の4は適用されない。

 

 

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

次回は、争点9以降を解説していきます。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けています。お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

2024

06.27

東京地裁判決文 解説③

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点3と争点4と争点5に対して公表していきます。

【争点3】

争点3 PS社とM社長は、Z社の著作権を侵害したといえるのか?(著作権侵害行為)

 

■Z社の主張■

 

PS社は、1998年の創業時から、Z社住宅地図を購入し切り貼りして、ポスティング用地図を作成し、配布員へコピーして渡していた。そのコピー枚数は、配布エリア数、1つのエリアを作るために平均7枚(1枚は、見開きの片側部分のこと)のZ社住宅地図原図が必要、営業期間などの指標から算出できる。

会社設立前の2年間では、5万3802枚をコピーしたと想定できる。また、2000年のPS社設立以降2019年までにPS社は、283万6022枚をコピーしていたと思われる。これらは、Z社の複製権を侵害している。

PS社は、フランチャイズ先等にも同様にポスティング用地図を作成して納めていたので、Z社の譲渡権及び貸与権を侵害した。

また、PS社ウエブページにて、Z社住宅地図の原図の一部の画像データを掲載したことにより、Z社の公衆送信権も侵害した。

 

■PS社の主張■

 

ポスティング用地図は、まず、配布エリアごとにZ社の住宅地図とは縮尺および回転角度が配布エリアごとに異なっている。そして、ポスティング用地図の見開きの端から余裕のある内側に配布栄らの実際の境界より少し外側に手書きでエリア枠線がひかれている。さらに、配布する広告物や配布期間を記入する枠である付票が配布エリア外に配置されている。

ポスティング用地図は、配布エリアごとに縮小・回転が定められるから、Z社住宅地図とは1枚が表現する範囲が異なる。そして配布員の報告により、新築物件や新しい道路などの情報が書き込まれている。

したがって、ポスティング用地図は、Z社住宅地図の原図とは異なる思想に基づき作成されたものであり、Z社の表現の個性(表現上の本質的な同一性)は埋没されている。

また、家形枠の表現は、都市計画図とZ社住宅地図を比べると、約84.7%は同一であり、Z社において新たに表現された家形枠は1%にも満たない。Z社住宅地図とPS社作成のポスティング用地図の一致点は、ありふれた表現のものである。

PS社のフランチャイズ先等のポスティング用地図の作成は、フランチャイズ先が購入したZ社住宅地図を使用して、フランチャイズ先からの依頼により手足としてコピーしたにすぎない。

PS社ウェブサイトに掲載されていたというZ社住宅地図は、4枚でありそれも元のZ社住宅地図の1ページの3%の面積にすぎない。

Z社住宅地図の複製物を譲渡又は貸与により公衆に提供したとは言えない。

※コピー枚数の計算方法についての見解。

PS社の住宅地図のコピー枚数は、20数年の歴史において、正確に出すことは不可能である。推測の域をでないが、売上規模、配布エリア、などを基準にするのが適当である。また、1枚のポスティング用地図を作成するのに必要なZ社住宅地図原図は、平均すると約3.5枚(区割り図単位、見開き左右で1枚)である。これらを勘案すると、1998年から、2018年(平成30年)4月までのコピー総枚数は多くても40万5885枚である。

なお、2018年(平成30)年5月以降は、Z社住宅地図を一切購入しておらず、2019年(令和元年)9月以降はZ社住宅地図を下図にしたポスティング用地図も一切コピーしていない。

 

■裁判所の判断■                   

 

M社長が個人でポスティング業を行っていたのは、1998年~2000年である。Z社が著作権侵害を主張しているのは、2002年(平成14年)以降、デジタルデータ化してから発行している住宅地図のみである。したがって、会社設立前のM社長個人への不法行為責任は問題にならない。

争点1において、2002年(平成14年)以降、デジタルデータ化後に順次発行されたZ社住宅地図には、地図の著作物と認めた。したがって、PS社がそれ以降に購入した地図に係るものは、Z社の複製権を侵害していると認めることができる。

ポスティング用地図についても、Z社の住宅地図を縮小して複写し、つなぎ合わせたものである以上、両者の創作的表現が同一であることは明らかであって、付票やエリア枠線があるからといってZ社の住宅地図の個性が見分けられないと評価することはできないから、その複写は著作権の侵害となる。

PS社のフランチャイジー等のエリアに対するポスティング用地図の制作も、複製権・譲渡権の侵害と認められる。PS社の主張はいずれも採用することができない。

PS社が、Z社の貸与権を侵害したとは認められない。

PS社のWebサイトへの記事掲載について、Z社の公衆送信権を侵害したものと認められる。

 

※コピー枚数の計算方法についての裁判所の判断

 

・侵害の対象期間の始期は、デジタルデータ化した後に発行されたZ社住宅地図に限られる。長野県、山梨県では、2002年(平成14年)以降である。

・侵害の対象期間の終期は、PS社の閉店の店舗は閉店時、その他の店舗は証拠保全が行われた2019年(令和元年)7月と認める。

・PS社は、月に1度ポスティング用地図を配布員にコピーして渡していたと認められる。

・1枚のポスティング用地図を作成するためには、Z社住宅地図7枚分をコピーする必要があると認める。

・上記より、侵害の枚数は、店舗ごとに

配布エリア数✕貼り合わせ枚数(7枚)✕侵害期間の月数に、ポスティング用地図の作成(配布エリア数✕貼り合わせ枚数)を加算した小計を求め、店舗ごとの小計を加算して求めた。

・その結果、著作権侵害となる期間に、PS社がZ社住宅地図をコピーした枚数は、96万9801ページと認められる。

 

 

 

 

 

【争点4】

争点4 PS社とM社長は、著作物と分かっていてZ社の住宅地図をコピーしていたのか?故意や過失はあったのかないのか?

 

■Z社の主張■

 

PS社は、長年にわたりZ社住宅地図を無断でコピーしてきたことを認めているので、PS社およびM社長に、故意又は過失が認められることは明らかである。

 

■PS社の主張■

 

Z社は、PS社社内での住宅地図の利用方法を知ったうえで、販売していた。また、Z社以外の3社の住宅地図制作・販売会社からは、追加料金を発生せずにポスティング会社が使う利用方法を許諾している。

また、2018年(平成30年)4月に警告を受けて初めて、Z社がポスティング業界で行なわれている利用方法を認めないことを知り、合理的期間内である2019年(令和元年)9月までに、Z社の住宅地図の利用を一切中止した。したがって、Z社の著作権を侵害したことには故意も過失もない。

 

 

■裁判所の判断■                   

 

遅くとも平成10年4月以降には、Z社の住宅地図の末尾には、「本商品は当社の著作物であり、著作権法により保護されています」「法律で特に定める場合を除き、当社の許諾なく本商品又は本商品に含まれるデータの全部若しくは一部を複製、転記、抽出、その他の利用をした場合、著作権法違反や不法行為となり、刑事上や民事上の責任を追及されることがあります。」などと記載されていることから、PS社がZ社の住宅地図の複製権を侵害したことに、故意があったと認めるのが相当である。

他方、M社長に対しては、故意又は過失について検討する必要はない。

 

 

 

【争点5】

争点5 M社長に、Z社の住宅地図をコピーしてはダメよと社員に言うべき任務があったかどうか?(任務懈怠行為=にんむけたいこうい)

 

■Z社の主張■

 

PS社は、取締役2名、従業員39名ほどの小規模企業のため、M社長が従業員に指示することにより、Z社住宅地図を下図としてコピーしポスティング用地図を作成したり、第三者に販売するなどの法令違反行為を行ったものだから、M社長には悪意又は重大な過失があったというべきである。

 

■PS社の主張■

 

Z社は、2018年(平成30年)4月に至るまで、PS社内での住宅地図の利用方法を認識していたにも関わらず、複製料を請求していなかったから、M社長はポスティング会社での利用方法が違法であるとは認識し得なかった。また、同月に警告文書を受領した後、合理的な期間内にZ社住宅地図の利用を停止した。

したがって、M社長には、職務を行うについて、悪意又は重大な過失があったとは言えない。

 

■裁判所の判断■                   

 

PS社の規模からすると、Z社の著作権を侵害したことについて、M社長は阻止するべき任務を負っていたにも関わらず、これを悪意により懈怠したと認めるのが相当である。

PS社の主張はいずれもM社長の任務懈怠責任を免れることにはならない。

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

次回は、争点6以降を解説していきます。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けています。お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024

06.20

東京地裁判決文 解説②

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

そこで、当社でもZ社裁判専用ブログ欄を開設しました。まずは、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点1と争点2に対して公表していきます。

 

 

【解説 争点1】

争点1 そもそも住宅地図は、著作権法で守られるべき著作物なのか?(住宅地図の著作物性)

 

 

■Z社の主張■

 

Z社の住宅地図は、多くの調査員の現地調査によって得た情報を取捨選択し、いかに正確に配列・表現するかという点に力点をおいて、統一的に編集されている。

特に、家形枠は、周辺の建物との位置関係を見ながら、目測や歩測によりおおまかな位置や長さを決めることになるので、誰が調査しても同じになることもなく、調査員の個性が表れる。家計枠は、線の太さ及び長さ、居住者名のフォント等の多くの選択肢の中から住宅地図作成会社ごとにバリエーションがある。

制作にあたり都市計画基本図を参照することはあるが、住宅地図とは見た目の印象が全く異なる地図となっている。

特に、2000年ころにデジタルデータ化した後の住宅地図は、それまでとは異なる新たな表現方法になっている。したがって、Z社の住宅地図は、著作権法で守られるべき著作物である。

 

■PS社の主張■

 

一般的に地図というのは、現実を正確に表すほど著作物性が狭くなる。特に住宅地図はほかの地図に比べて著作物性はさらに制限されるものである。

Z社の住宅地図は、江戸時代の古地図を参考に作成を開始しており、ほかの住宅地図制作会社もなんらかの既存の地図を基礎としてつくられている。Z社自身、都市計画図を下図として(依拠して)、作成したことを認めている。

Z社の住宅地図は機械的に作成されており、正確性・精密性を主張されているところからして、創造性を発揮する余地はほとんどない。国土地理院も、都市計画基本図は、素材の取捨選択、配列、表現、レイアウトに創作性を発揮する余地が少なく、著作物性が認められる可能性は低いとの見解を示している。

過去に作成された住宅地図にも家形枠が記載されていることから、家形枠があるからといってZ社独自の創造性とは言えない。実際に無作為に選んだ地域で、Z社の住宅地図と都市計画基本図を比べてみたところ、家形枠の記載のうち、84.7%が都市計画基本図に由来し、新たに記載された家形枠は1%に満たなかった。

Z社は、住宅地図のデジタルデータ化に伴い、平成17年時点で、地図作成業務のうち少なくとも6割を海外子会社で業務的に作成しており、地図に独自性がないことを裏付けている。

よって、Z社の住宅地図には創作性が認められないから、地図の著作物ではない。

 

■裁判所の判断■                   

 

(1)一般的には、地図は個性的表現の余地が少なく、文学・音楽・造形美術上の著作に比べて著作権による保護を受ける範囲は少ないのが通例である。地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものである。

(2)Z社の住宅地図は、遅くとも2006年(平成18年)3月までにデジタルデータ化(本件改訂という)が行われたと認めるのが相当である。

したがって、著作権侵害の範囲は、本件改訂以降発行されたZ社住宅地図とする。Z社も本件改訂以前については、著作権を主張していないので、著作物性については検討をする必要はない。

(3)Z社の住宅地図は、見開きの左右2頁を用いて1枚の地図が収められ、地図の周囲にAからJ、1から5など目盛りが振られていて探しやすく、実線、破線が使い分けられ、信号機やバス停などイラストで記載されている。道路標識を模したマークや山間部の等高線、居住者名や建物名など記載されている。

(4)本件改訂以降のZ社住宅地図は、長年にわたり住宅地図を作成販売してきたZ社において、住宅地図に必要と考える情報を上記のように取捨選択し、より見やすいと考える方法に表示されたと評価することができるから、都市計画図等に新たな創作的表現が付加されたものとして、地図の著作物と認めるのが相当である。

(5)住宅地図において家形枠を記載することがよくあるとしても、Z社の住宅地図の家形枠の具体的表現がありふれていることを認めるに足りる証拠はないから、著作物性を否定することはできない。その他、PS社の主張は、いずれもZ社の著作物性を否定するほどの論理ではないため、いずれも採用することができない。

 

 

 

 

 

 

【解説 争点2】

争点2 Z社の住宅地図の著作者はだれなのか?(著作者)

 

■Z社の主張■

 

Z社の住宅地図は、Z社の発意(意思)によって、Z社と雇用契約又は業務委託契約を締結した者が、調査員としてZ社の指揮監督の下に現地調査を行い、原稿を作成し、労務提供の対価を受領しているので、職務として地図を作成している。また、Z社住宅地図には、著作者名としてZ社の会社名が記載されている。そのため著作者は、Z社(法人)である。

 

■PS社の主張■

 

Z社の地図記載方法は、遅くとも明治26年から昭和59年までの間に、Z社以外の他社により示されているものであり、その表現に実質的な変更がないので、新たな創作への発意(意思)は認められない。

Z社が調査員と雇用契約を結んでいた場合であっても、その契約や勤務規則の内容によっては、Z社の法人著作とならない可能性もある。また、Z社の調査業務委託契約書によれば、契約書の中に業務遂行過程に関する規定がなく、Z社は指揮監督する立場にあることもなく、成果物の納入の規定があるのみである。外部の請負業者から著作権を譲り受ける規定もない。

もし、家形枠の記載などにおいて調査員の個性が表れているとすると、著作権者は調査員個人になるので調査員とZ社の間に著作権譲渡に関する契約が締結されるべきである。このことは、デジタルデータ化される前のZ社住宅地図においては、住宅地図に調査員の名前が記載されていた事実からも裏付けられる。

Z社住宅地図の表紙には、作成者又は著作者としてZ社会社名は記載されておらず、平成20年以降国立国会図書館等のZ社住宅地図に関わる書誌にも、出版社欄にZ社社名があるのみで、著作者欄は存在しないか空欄になっている。Z社著作の名義の下に、各住宅地図を公表していない。したがって、著作権法15条1項の要件を欠くので、Z社は著作者であるとは認められない。

 

■裁判所の判断■                   

 

Z社は、現地調査の業務を外部委託する場合に、注意事項をまとめた調査マニュアルを交付し、受託者に支給する制服を着用させ、社員証又は調査員証の携帯を義務付けている。雇用契約の従業員に現地調査を行わせることがあるが、同様の指示をしているので、調査業務委託基本契約において、受託者に対する指揮監督に関する規定がなかったとしても、受託者は、Z社の指揮監督の下、職務を遂行していたと認められる。

また、Z社住宅地図の末尾及びパッケージには、Z社会社名と「本商品は、当社の著作物であり、著作権法により保護されています。」と記載されている。このことは、自己の著作の名義の下に、住宅地図を公表しており、著作者はZ社と認められる。PS社の主張は、いずれの論点もこの認定を覆すに足りる証拠とはなりえない。

 

 

 


※判決文全文を原文で欲しいという方は、以下へお気軽にお申し出ください。6月20日現在、裁判所のホームページでは当判決文を検索しても表示されないため、当社から公表する次第です。(事件番号 令和元年(ワ)第26336号)

申込先 Z社裁判問い合わせ窓口

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

2024

06.14

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

そこで、当社でもZ社裁判専用ブログ欄を開設しました。まずは、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

まずは、判決の主文は以下のとおりでした。

 

1.PS社は、今まで買ったZ社の住宅地図について、複製したり、複製物を公衆に提供したり、ネットなどで住宅地図の中身が読める状態で送信してはいけません。

2.PS社とM社長は、連帯して3000万円(同時に令和元年11月15日から年5分の損害金を足して)を、Z社に支払いなさい。

3.上記1.2以外のZ社の請求は認めません。

4.Z社の訴訟費用(Z社が裁判開始時に納付した印紙代等)は、PS社とM社長の負担とします。

5.上記1.2の項に限り、仮執行することができます。(PS社及びM社長の銀行預金口座をZ社は差押えすることができます)

 

PS社側が裁判で主張してきた事柄は、ほぼすべて、ことごとく否定されており、全面敗訴といえる非常に恐ろしい判決でした。PS社とM社長は、知財高裁へ控訴すると同時に、仮執行されないように強制執行停止申立てを行い受理されました。

当ブログでは、1審判決の判決文を、原告、被告ということばを使わず、また複写をコピーと表記するなど、なるべく平易な言葉で争点を解説していきたいと思います。その際に判決文になるべく従順に、当社=被告の立場での新たな見解や主張を加えずに解説していきたいと思います。

 

当社の主張は、控訴審=知財高裁でひきつづき丁寧に行っていく予定です。

 

 

本裁判での争点は、以下の11点に整理されました。

 

争点1 そもそも住宅地図は、著作権法で守られるべき著作物なのか?Z社の住宅地図の場合はどうであるのか?(住宅地図の著作物性)

争点2 Z社の住宅地図の著作者はだれなのか?(著作者)

争点3 PS社とM社長は、Z社の著作権を侵害したといえるのか?(著作権侵害行為)

争点4 PS社とM社長は、著作物と分かっていてZ社の住宅地図をコピーしていたのか?故意や過失はあったのかないのか?

争点5 M社長に、Z社の住宅地図をコピーしてはダメよと社員に言うべき任務があったかどうか?(任務懈怠行為=にんむけたいこうい)

争点6 Z社は、PS社が社内コピーを繰り返していると知っていて住宅地図を売っていたのか?(許諾の有無)

争点7 許諾料を支払うことなく、住宅地図を必要な範囲で社内コピーするといった慣習があったのかなかったのか?(慣習の有無)

争点8 PS社とM社長は、住宅地図のコピー行為に対して、著作権法30条の4の内容(地図に表現された思想や感情を味わうための利用)を適用されるべきか否か?

争点9 住宅地図の利用者が零細的利用であることを理由とする著作権行使の制限があるのかないのか?住宅地図の利用上、必要な範囲での利用といえるのではないか?

争点10 今後、PS社がZ社住宅地図を所有していることにより、Z社の著作権を侵害するおそれがあるかどうか?

争点11 PS社における住宅地図の利用が、Z社に損害をどのくらい与えたのか?(損害額の確定)

 

以上の11点について、判決文では、Z社の言い分とPS社の言い分を併記したうえで、裁判所の判断を明確にしています。

次回からは、争点をひとつずつ分解して解説していきます。

 

 

※判決文全文を原文で欲しいという方は、以下へお気軽にお申し出ください。6月14日現在、裁判所のホームページでは当判決文を検索しても表示されないため、当社から公表する次第です。(事件番号 令和元年(ワ)第26336号)

申込先 Z社裁判問い合わせ窓口

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。

2024

06.04

当社社員・配布員のみなさんへ

 

■Z社との過去のお取引について個人的な想い■

 

当社創業のころ(約20数年前)は、売上がまだ安定しておらず、一時期、私はZ社の住宅地図調査員として働いておりました。その時の担当者は、たいへん地図が好きな方で私に手取り足取り調査の方法を教えてくれました。1年後、ポスティング業を開業したということを聞いて、ポスティングの仕事もいただいていました。いまでも当時の担当者には、感謝の念しかありません。

また、会社設立後も住宅地図調査の仕事を請け負ったり、いくつかの店舗では地図製作のある作業部分の軽作業を請け負ったりしていました。Z社の住宅地図はポスティング業界には必須のアイテムであり、大変親和性のたかいビジネスパートナーでした。

Z社の営業マンの方も、当社の業務内容を熟知していただき、住宅地図購入の際には、値引き要請にも真摯に応えてくれ、たいへん友好的な関係でした。

 

なぜ、このように過去に遡っての著作権侵害の騒動に巻き込まれなければならないのか、やるせない気分です。

 

当社は、毎年経営計画書発表会というのを催し、社員全員に経営計画書を渡しています。その1ページ目には、「正直であれ」という言葉があります。私は、社員に対して正直であれと言っているわけなので、当該裁判において私が嘘偽りなく正直に主張しなければ、社員を裏切ったことになります。裁判では、なにも隠さずなにも曲げず、うそ偽りなく主張してまいりました。(裁判の進行状況は、随時社員の皆さんには、全体会議などでお知らせしています)

 

過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる。

 

今回の件で当社では、脱Z社を掲げ、他社製住宅地図などへ移管してきました。いままでは、Z社の住宅地図が一番と思っていましたが、意外とそうではない事実も判明しました。それは、配布時には必要ない情報が多すぎるということです。ポスティングに必要な情報はなにかを見極め、ポスティングに必要な最適な地図を当社は制作するノウハウを身につけつつあります。これは、不幸中の幸いともいえる出来事です。

ぜひ、皆さんで知恵を絞って、オリジナルな著作権料フリーな地図を作って、ポスティングの精度を上げていきましょう。

当社は、今回のことをきっかけに、一皮むけて脱皮し、より社会に役立ち、堂々とポスティングビジネスができる会社に成長していきたいと考えております。私には、その地平線がうっすらと輪郭線が見えております。社員・配布員のみなさん、どうぞ安心して当社でお仕事に励んでもらいたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

2022年6月4日 村松昭文

                         

追伸

現在当社で配布員さんへ渡している地図はこのようなものです。Z社の地図は一切利用しておりません。

また、Z社から過去に購入した住宅地図は、現在社長室のまえの棚に縄でしばって保存されており、一切コピー複写ができない状態になっています。こちらは、当社の過去の歴史産物として、新入社員教育に利用しております。

 

 

 

 

 

2024

05.31

■東京地裁での裁判判決のお知らせ■

2019年(令和元年)9月30日、東証一部上場会社(当時)であるZ社より、訴状が東京地裁経由で届きました。Z社(原告)は、住宅地図制作・販売を行う全国的な会社です。内容は、当社が行ってきたZ社製住宅地図の複製コピーに対しての著作権侵害の疑いがあるというものでした。

当該裁判は、過去の事実関係については、ほぼ争いはありませんが、 市販されているZ社住宅地図にはそもそもどのくらいの著作物性があるのか、また自社内での住宅地図の複写という行為が著作権侵害にあたるのかどうかが争点になっていました。

ポスティング業界で広く行われている業務が、過去にさかのぼって著作権侵害としてなぜか当社(被告)のみへの訴訟にまで発展したことは、誠に遺憾であり、当社の望むところではございません。したがって、当社を応援していただいている弁護士・弁理士の皆様のご協力により、主張すべき事柄はきちんと裁判で主張してまいりました。

 

この度、5月27日(金)に東京地裁にて、判決が下されました。

 

判決結果は、

当社が、社内利用のために、Z 社から購入した地図を複写すること(ポスティング用地図の原図を作成すること)、原図に加工を加えた当社独自のポスティング用地図をさらに複写することはどちらもZ社の著作権を侵害し、その都度1枚当たり200円を支払うべきである 

というものでした。

判決を受けて、当社では、以下の対応を検討しています。

Z社の地図の基礎となるのは都市計画図等であると判決も認めているため、Z社地図の著作物性については争う部分があり、社内利用をする場合の複写がすべて著作権侵害になる、あるいは、その場合の金額が1枚当たり200円であるということについては、争うべく控訴する方向でおります。

 

当社としましては、ポスティング業界の発展のために、下記の方々には、当該裁判の今後の進行と内容などについて積極的に情報公開していきますので、ご希望の方はお気軽にお申し出ください。また、東京地裁の判決内容はインターネットのサイトにて、近日中に公開される予定です。こちらでご覧いただいても結構です。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search7

 

当社から積極的に情報公開する方々

 ■ポスティング業界の発展のために、当該裁判の行方に注視し、自社の経営判断の参考に

していきたいと考える同業他社の経営者の皆様(代表者およびそれに準じる方々)

 ■ポスティングの業界団体の皆様

 ■報道・マスコミ関係者の方々

 ■著作権問題および司法関係の研究者の方々

 

当該裁判に関する件につきましての問い合わせ窓口を以下に一本化しましたので、情報公開をご希望される方々は、こちらにご連絡ください。

㈲ペーパー・シャワーズ Z社住宅地図裁判窓口 0120-881-986

(平日10;00~17;00)

今回の地裁判決は、経営者としても会社としても学びの多いものでした。さらに知財高裁のご指導を仰いでまいります。

 

                         2022年5月31日

                         ㈲ペーパー・シャワーズ 

                           代表取締役 村松昭文

 

追伸

★当社取引のお客様および配布員の皆様へ

当社では、Z社より2018年3月より警告を受けていましたので、徐々に住宅地図の使用を他社製住宅地図および別手段に切り替えてまいりましたので、以降Z社の住宅地図を購入しておりません。また、徐々にZ社の複写利用は中止しており、2019年9月以降は一切の複写行為はありません。したがって、現在のところ当該裁判による通常業務への支障は全くございませんので、お客様、および配布員の皆様には、ご安心ください。

★ポスティング業界の同業他社の皆様へ

当社で現在配布員さんへお渡ししている地図の作成方法などにつきまして、アドバイスさせていただきますので、積極的にお申しつけください。Z社の住宅地図に依存しないポスティング業における地図の作成・管理方法につきましても、情報交換させていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

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