Z社裁判の判決文 解説④(争点6と争点7と争点8)

2024

07.04

東京地裁判決文 解説④

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点6と争点7と争点8に対して公表していきます。

 

【争点6】

争点6 Z社は、PS社が社内コピーを繰り返していると知っていて住宅地図を売っていたのか?(許諾の有無)

 

■PS社の主張■

 

遅くとも2013年(平成25年)には、Z社から住宅地図を割引価格で購入していた。ポスティング用地図は、本社壁に貼るなどして利用しており、Z社はPS社内での住宅地図の利用方法を十分把握していた。また、2014年(平成26年)2月25日には、PS社本社にて、Z社は電子住宅地図デジタウンのデモンストレーションを行っている。

これらの事情から、Z社がPS社内での住宅地図を必要な範囲でコピーしていたことを許諾していたというべきである。

 

■Z社の主張■

 

Z社は、日本中の多種多様な団体に対して住宅地図を販売しており、各購入者がどのような用途でZ社住宅地図を使用しているかを逐一調査することなどは、到底不可能である。PS社の著作権違反の疑いがあることを知ったのも、内部告発がきっかけであり、PS社の社内利用を知っていながら、住宅地図を販売していたことはない。

また、PS社からは複製の許諾を求める申し入れすらない段階で、許諾するわけはない。

したがって、Z社がPS社のポスティング用地図を作成に対して住宅地図をコピーすることを許諾したことはない。

 

■裁判所の判断■                          

 

PS社の主張をもっても、Z社があらかじめPS社のポスティング用地図を作成するためにコピーすることについて許諾していたと認める十分な証拠ということはできない。

したがって、Z社の許諾は無かったと言える。

 

 

【争点7】

争点7 許諾料を支払うことなく、住宅地図を社内コピーするといった慣習があったのかなかったのか?(慣習の有無)

 

■PS社の主張■

 

住宅地図は、大きさや重さの面から持ち歩くことが困難であり、実用品として販売されている。PS社が、Z社以外の3社の住宅地図作成会社から、住宅地図を購入するにあたり、ポスティング用地図を作成するためにコピーすることを許諾されており、3社からは通常の購入価格以外に追加料金を支払うことは求められなかった。

これらの事情により、住宅地図を正当に購入した者は、同時使用しないことを前提として、当該住宅地図を購入価格以外の対価を支払うことなく1部コピーすることが許諾されているという慣習があると認められる。

 

■Z社の主張■

 

住宅地図作成会社は、いずれもその作成する地図に、当該地図を無断でコピー等することは著作権法により禁止されていると明記されている。他社がPS社に許諾した内容は、通常は禁止されているコピーを例外的に認めるとしたものにすぎない。

 

■裁判所の判断■                          

 

PS社の論理には飛躍がある。Z社以外の住宅地図作成会社3社が提出したポスティング会社の利用方法であれば追加の使用料等なくコピーすることを許諾したことは、認められるものの、このような事実によって、住宅地図作成会社一般について、販売した住宅地図のコピー等を追加の使用料の支払いを受けることなく許諾するという慣習が存在すると認めることはできない。したがって、PS社の主張を採用することはできない。

 

 

 

 

 

【争点8】

 

争点8 PS社とM社長は、住宅地図のコピー行為に対して、著作権法30条の4の内容を適用されるべきか否か?

 

■PS社の主張■

 

ポスティング用地図は、配布エリア、配布数、空家・廃屋の別、新築物件、新たに設置された道、家屋の入り口やポストの位置等の情報を享受する目的で、下図としてZ社住宅地図を利用している。したがって、ポスティング用地図に、Z社住宅地図の何らかの思想又は感情が残存していたとしてもこれを享受する目的とするものではない。

したがって、著作権法30条の4柱書「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に該当し、PS社はZ社の住宅地図を利用することができる。

 

■Z社の主張■

 

Z社住宅地図を利用する者は、家形枠等を目的となる地点の検索又は地形の把握という知的又は精神的な欲求に従って利用している。PS社も家形枠等の記載を利用することを前提としてポスティング用地図を作成している。したがって、著作権法30条の4により許される事案に適用されない。なお、同条は2018年(平成30年)改正、2019年(平成19年)1月1日施行されたものであるので、同日以前のコピーに対しては適用されない。

 

■裁判所の判断■                           

 

PS社は、Z社住宅地図に記載された建物の位置、道路等の情報を利用するために、コピーしたものだから、コピー行為は、Z社住宅地図に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は配布員に享受させることを目的としたものであることは明らかである。

また同様に、PS社が複製物を譲渡したり、複製物をウエブページ上に掲載したりしたことも同様に享受している。したがって、著作権法30条の4は適用されない。

 

 

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

次回は、争点9以降を解説していきます。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けています。お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

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