Z社裁判の判決文 解説⑤(争点9と争点10)

2024

07.12

東京地裁判決文 解説⑤

 

5月27日の東京地裁でのZ社(原告)から当社PS社及びM社長(被告)に対する著作権侵害差止等請求事件の判決について、当社ブログ欄へも多くのお問合せをいただいております。内容を詳しく教えてほしい、判決文全文を見せてほしいなどのご依頼に当社では順次対応しております。

Z社裁判専用ブログ欄では、判決の内容を分かりやすく、公表していきたいと思います。(原文のままではありませんが、裁判に特有のことばをわかりやすい言葉に置き換えておりますのでご了承ください。)

 

今回は、争点9と争点10に対して公表していきます。

 

 

 

 

【争点9】

 

争点9 住宅地図の利用者が零細的利用であることを理由とする著作権行使の制限があるのかないのか?(Z社の著作権行使は、濫用ではないか?)

 

■PS社の主張■

 

重量のある住宅地図の書籍を持ちながらポスティングを行うことは非現実的であり、配布員がZ社住宅地図を下図とするポスティング用地図を持ち歩くことによって、それが著作権を侵害する結果となったとしても、零細的利用として、Z社の著作権行使は制限されるべきである。

 

■Z社の主張■

 

そもそも零細的利用であればこれに対する著作権の行使が制限されるという考えは、著作権法上も裁判例上も受け入れられるものではない。なお、PS社の行為は大量にZ社住宅地図をコピーし、利益を上げていたものであるから零細的利用であるとは到底いえるものではない。

 

■裁判所の判断■                           

 

PS社の主張が、Z社の権利の濫用を主張する趣旨であったとしても、2006年(平成18年)以降に発行されたZ社住宅地図を合計98万9801頁もコピーした行為は、Z社の著作権行使が濫用であるとの評価の根拠にはならない。

したがって、PS社の主張は採用できない。

 

 

 

 

 

 

 

【争点10】

 

争点10 今後、PS社がZ社住宅地図を所有していることにより、Z社の著作権を侵害するおそれがあるかどうか?

 

■Z社の主張■

 

PS社は、Z社住宅地図をコピーし、複製物を譲渡又は貸与により公衆に提供し、これをPS社ウェブサイト内で掲載することにより、自動公衆送信又は送信可能化しているから、今後もZ社の著作権を侵害するおそれがあると言える。

 

■PS社の主張■

 

PS社は、すでにZ社住宅地図及びこれをコピーして作成したポスティング用地図を一切使用しておらず、今後も使用する意思はないから、今後Z社の著作権を侵害する恐れはない。

 

■裁判所の判断■                           

 

Z社住宅地図の1~11の最新の版に係るものが、差止等対象地図になる。PS社はポスティング業務を行うにあたり、現在差止等対象地図を保有していなかったとしても、一般に販売されているZ社住宅地図を再び取得してコピーすることは容易であるから、PS社が将来的にZ社住宅地図の複製権、譲渡権及び公衆送信権を侵害するおそれがあると認めるのが相当である。

Z社住宅地図の12~16は、貸与権を侵害していた事実は認めていないので、将来的にも侵害するおそれはない。

したがって、PS社は差止等対象地図を保有しておらず、その複製物も所有していると認められないため、Z社における差止等対象地図の廃棄請求は認められない。

(注)Z社住宅地図の1~11などの番号は、PS社の屋号「まかせて」ごとの市町村を示しています。1~11は、PS社直営エリアの市町村であり、12~16は、PS社のフランチャイズエリアの市町村を差しますが、ここでは省略いたします。

 


※現在、裁判所のホームページにて、判決文全文を確認することができるようになりました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91250

次回は、争点11を解説します。

当社では引き続き、Z社裁判への問い合わせ窓口を設けています。お気軽にお問合せください。

0120-881-986(平日10時~17時)

 

※(注意)当ブログでは、(有)ペーパー・シャワーズをPS社、村松社長をMまたはM社長と表記します。また、原告会社は住宅地図制作・販売会社では誰もが知る東京証券取引所プライム市場の上場企業ではありますが、ここではZ社と表記いたします。


 

 

 

 

 

 

 

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