(前号からのつづき)
東北から帰ってきて、私も日常の生活に戻っていました。
9月になって稲穂が色づき、稲刈りが始まるころ、私の家に東北のあの町の消印のある一通の手紙が届きました。
そこには、あのことば「克勤克儉」の読み方と意味が書かれていました。
斎藤實記念館の学芸員さんが、一生懸命にまわりの方々に聞いてくれて、判明したということでした。ちょっとした会話から、長野から訪ねて行った変わったおじさんのために、時間をかけて調査してくれたことが文面からも推察できました。
さて、本題です。
「克勤克儉」の読み方は、
「よくきん よくけん」
でした。
意味は、
「職務を成し遂げても、行いを慎んで控えめにする」
ということでした。
出典は、唐人の処世訓(身を守るの所為)のなかにある一節で
「克勤克儉無怠無荒」からきているということでした。
こちらの読み方は、
「よくきん よくけんに たいなく こうなし」
になるそうです。
また、その意味は、
「心を尽くし 職務を成し遂げ
行いを慎んで控えめに
怠りなく励めば
見捨てられる(無視される)ことはない」
ということでした。
この夏、日本の首相だった人物が選挙演説中に41歳の男性が撃った凶弾に倒れるという衝撃的な事件が起き、それをきっかけに郷土の公民館に掲げられている扁額を思い出してしまいました。
昭和8年に日本国の首相だった人物は、禁酒をして村の財政を立て直した全国の村長さんを首相官邸に招いて、ほめたたえたあと、「克勤克儉」の扁額を贈りました。扁額を贈られた村では、それを大事に後世に伝えてきました。
その後、扁額を贈った首相は、首相退任後でしたが欧米寄りの姿勢を批判されて、二・二六事件で青年将校に殺害されていました。
「克勤克儉」の読み方や意味を探して、東北の斎藤實記念館にまで行ってしまいました。その町が、大リーグエンゼルスで大活躍中の大谷翔平選手が育った地とは知りませんでしたが、新たな発見でした。
なぜそこまでして、このコトバの読み方や意味を知りたかったのかは、今となってはよくわかりません。しかし、私や当社がいま必要としているコトバだったような気がしてきました。
いまは晴れ晴れとした気持ちで、秋晴れの空を見上げることができるようになりました。
私のひと夏の冒険に5回にわたりお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
Special thanks to 斎藤實記念館 学芸員のⅠ様
(完)