○○の星物語ー1・・・一人の見知らぬ青年が我が家のチャイムを押した!

2024

03.20

3年に渡ったコロナ禍では、他人とマスクなしで会話することや、日常生活空間からの移動が厳しく制限されました。しかし、今考えるとコロナ禍があったからこそ、出会えたというような人の例が皆さんにもいくつかあるのではないでしょうか?私の身近に起きたそんな物語を連載してみます。

 

○○の星物語-1・・・一人の見知らぬ青年が我が家のチャイムを押した!

 

それはコロナ禍がはじまって半年したころ、2020年7月の暑い日曜日の朝、ひとりの見知らぬ青年が我が家の玄関のチャイムを押したところから物語がスタートします。玄関先にぽつんと立っているその青年は、カジュアルな服を着て背が高くメガネをかけた20代前半の若者でした。もちろんマスクをしていました。対応した私たち夫婦に、緊張しながらこのように切り出しました。

 

「あの~、こちらで畑を貸してくれると聞いたんですが…」

 

妻の知人から聞いてきたらしい。玄関先で2mの距離を取りながら、話を聞きました。なんでもコロナ禍で職場がリモートばかりになってしまったと言います。この青年をA君としましょう。A君は長野県の隣県の出身で、この年に就職してこの地にやってきたので、アパート暮らしだが、ずっと連日家の中にいて頭がおかしくなりそうだと言います。実家に帰ることもできず、毎日アパートの一室でパソコンとスマホでの仕事なので、体もなまり、同僚にも会えず精神的にまいっているといいます。

 

そこで、休日に、土に触れて畑を耕してなにかを植えたり、育てたり、収穫したりという野良仕事をすれば、いまの精神状態から脱することが出来るのではないかと考えて、どこかで畑を借りられないかと探していたということが分かりました。

 

我が家は、中山間地域に先祖代々つづく家ですが、父母の代まで一生懸命農業を広げてきた田畑が、家の周りにひろがっていました。私の代になってそれらが耕作放棄地になり、草ぼうぼうな状態でした。そのような耕作放棄地は、この地ではどこにでもあります。田畑を使ってくれるなら、私たち夫婦には、願ってもないことでした。

 

「うちにある鍬やトラクターなどの農機具は自由に使っていいよ。(家の目の前が畑だけど)いちいち我が家に顔をだして、その都度あいさつしなくていいので、好きなときにきて自由にやっていいよ。」

「ありがとうございます。では、天候をみて来週の土日から来ます。」

 

と言ってA青年はうれしそうに帰っていきました。

 

翌週、我が家の耕作放棄地の畑には、3~4台の車が停まって5~6人の青年がおりてきて畑を耕しはじめました。

えっつ、一人じゃなかったの?とA君に聞くと、職場で話したら、「おれも・・・」「俺も・・・」「わたしも・・・」「私も・・・」と参加者が増えたといいます。にぎやかになって、まぁ、いいかと見守ることにしました。

 

我が家の前にある耕作放棄地は、県道沿いにあるので、結構くるまが通ります。見慣れた耕作放棄地が急に見知らぬ若者たちであふれているので、近くの村人の軽トラックが時々停まって見ていくようになりました。何がはじまったんだ?・・・という感じです。

 

私たち夫婦は、いつころかその集団を「○○の星」と呼ぶことにしました。○○には、A君の職場の名前が入るのですが、ここでは伏せますので、ご了承ください。

私たちの会話は、こんな感じです。私「今日、○○の星の皆さんは来ていた?」妻「○○の星が、今日は3人来てたわよ。1台あった古い豆トラの動かし方を教えておいたわよ。」「○○の星は、今日は女の子もきてたわよ。聞いてみたら△△県出身だって!遠くから就職して偉いわよね。」

 

このようにして、○○の星の皆さんと我が家の交流が、コロナ禍をきっかけにして始まりました。

(次回へつづく)

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